豪州タスマニア産のPEFC認証木材、木材調達基準から逸脱の懸念―「日経エコロジー」の記事をもとに

製造者が消費者に対する「エコ商品」の環境保証の裏付けとして認証制度を用いる事例が増えているが、それがタスマニアで生産されている木材となると、たとえ世界的な森林認証制度によるロゴマークが付せられるとはいえ高い環境パフォーマンスを求める消費者の理解を得るのは難しいようだ。

「環境時代の死角」という特設コーナーで取り上げられた先月号『日経エコロジー』の記事では、認証制度に頼った木材調達の高リスクが指摘されている。問題とされる木材製品とは、タスマニアの天然林由来の合板を基材とする複合フローリング商品だ。

豪州産の認証木材に環境破壊の指摘 NGOが日本商品の不買運動を展開
三井住商建材、永大産業、パナソニック、 大和ハウス工業、積水ハウス
今年2月、日本の大手住宅メーカーにこうした内容のメールが毎日数十通届くようになった。きっかけは、今年1月31日に環境NGO(非政府組織)が立ち上げたウェブサイトだ。閲覧者に対して、住宅メーカーに不買を訴えるメールを出すよう呼びかけた。熱帯林行動ネットワーク(JATAN)など日本のNGOも協調する。

日経エコロジー「豪州産の認証木材に環境破壊の指摘」

記事では、森林破壊を指摘する環境NGOに対する反駁として、日本側の購入企業がPEFC認証取得によって調達の正当性を主張する姿が浮き彫りにされている。しかし、いかなる認証制度といえども完全なものはなく、自社が掲げる調達基準に合致しているか否かは生産現地に赴き自らの目で検証すべきでないだろうか? 「エコ」を謳う商品であればなおさらである。

タスマニアの木材製品についていえば、今からさほど遠くない過去に、やはり同じタスマニア林業公社から州有の天然林材の提供を受けていた豪州最大の木材チップ輸出企業のガンズ社が世界中の環境団体から原生林破壊の元凶として糾弾を受けていた。チップを大量購入していた日本の製紙会社は、PEFCと相互承認しているAFS(オーストラリア林業規準)を取得していることを「持続可能な森林経営」の証左としてきた。しかし、非持続的な林業施業のために経営展望を見失ったガンズ社は2010年9月、天然林主体の生産体制からの完全離脱を表明する。市場から拒絶されたガンズ社は植林材をベースとする製品開発へとシフトすることになる。こうした経営転換にAFSやPEFCがなんら積極的な役割を果たせなかったことは事実である。このことを身近な教訓として日本の建材・住宅メーカー各社は学ぶべきでなかっただろうか?

昨年10月にグリーンピース・オーストラリア・パシフィックと他の2環境保護団体は、PEFC認証が国際的市場で信頼性を勝ち得ていない事情を、相互承認している世界各地の地域的な森林認証制度の実地検証をもとにレポート、On the Groundにまとめた。執筆者の一人、グリーンピースのリース・ターナーは言う―「環境配慮をアピールするラベルの背後でPEFCは多くのケースで、チリ、ボルネオ、インドネシアなどで熱帯林破壊の状況追認に追い込まれ、先住民や環境保護団体の懸念や糾弾をないがしろにしてきた」と。

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タスマニアの「持続可能な森林経営」-再生焼き (写真:Rob Blakers)